コールセンター生活8日目 高嶋とデート
ずっとモニタリングするというある意味苦行のような研修の一日が終わった。
ここのところ、ひたすら研修を受け続けてきて少しストレスが溜まってきていた。
「高嶋、あのさ。」
「なに、やっさん。」
「今日このあと暇?飯でも食いに行かない?」
基本、外食ばかりの僕はいつも夜ご飯は外で食べているのだが、それに高嶋も誘ってみた。
「いいね、行こうよ。」
高嶋はあっさりOKしてくれた。
僕はホモだけど、はっきり言って高嶋はまったくタイプではない。ただ若いだけで、なんの魅力も感じない。
でも、この一週間一緒に研修を受けていると、なんだか共に戦っている同士のような感覚になってきている。
なにせ、研修でも隣同士で座ることが多い上に昼食も一緒に取っているのだから、一日中一緒にいるといっても過言ではない。
そうなってくると、最初はなんとも思っていなかった相手でも親近感が自然と湧いてくるものだ。
「俺は、一杯飲みたいんだよね。」
これ、おっさんの僕のセリフ。
「いいよ!飲みに行こう!」
こうして高嶋とのデートが行われることになった。
コールセンターがある場所は付近に居酒屋が多く、飲みに行くところは特に困らない。
高嶋と僕はそこらへんにあった適当な居酒屋に入ることになった。
居酒屋で高嶋とは職場のこと、プライベートのことなど色々だった。
ただし、まだこいつにも自分が自営業で仕事をしていることは言っていなかった。
酒も入り酔いがまわってくると、高嶋は饒舌になってくる。
「コールセンターって離職率が90%ってネットで載ってたけど、なんかすごく楽しいよ!今のところ!同期の人たちにも恵まれてるし、最高だよ!」
高嶋が無邪気に言う。
こういうところを見るとちょっと可愛いなって思ったりもする。
「まあ、まあ研修中だからね。ゾンビみたいな先輩バイトの様子を見てると、これから地獄が待ってるんだと思うよ。」
「そうなのかなー!でも俺はやっさんといるとすごく楽しいよ。俺はやっさんに会えて良かった思ってるよ!」
・・・かわいいことを言ってくれるな、こいつは。
なんだか変な気分になってきたので、自分が犯罪を侵してしまわないようほどほどのところで切り上げてその日は帰った。