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コールセンター生活31日目 莫大な金額

今日、和田さんが突然こんなことを言ってきた。

 

「やっさんって結婚とかしないですか?」

 

僕はこいつに結婚してるともしていないとも一度も言った覚えはないのに、「結婚していない」という前提で話をしてきやがった。

 

「いいじゃん、別に。俺は一人が楽しいんだよ。」

 

まさか「俺、ゲイだし。女とか興味ないし」とは言えない。そんなことを言うと二十歳そこそこの女の子にトラウマを残してしまう。

 

「えーー。そうなんですか。それって寂しくないですか?そんな人生って楽しいんですか?」

 

なんだよ。ほっとけよ。

 

「うるさいな。俺は一人で適当に生きているのが楽しいだよ。別に一人でも色々楽しいんだよ。」

 

「彼女とかはいないんですか?」

 

「いないよ。そういう和田さんだって彼氏いないでしょ。」

 

俺もこいつに彼氏なんかいるわけがないと決めつけている。

 

「なんでわかるんですか!いないですけど・・・。でも私は留学費用を貯めなきゃいけないんでそんなことをしてる場合じゃないんです!」

 

本気で留学費用を貯めたいのなら、その厚化粧と年齢不相応なファッションをやめろと・・・

 

「そうなんだ。ところでさ、その留学費用っていくら貯めないといけないの?」

 

「180万円です」

 

は!?そんな莫大な費用をこの子はバイトで貯めようとしてるのか!?

 

これには隣に座っていた河田さんも驚愕して口を挟まずにはいられなくなったようで

 

「は!?そんな金額普通に働いてたら絶対無理じゃん!だからさ、てっとり早く稼ぎたいんだったら夜の店で働きなって!」

 

河田さん・・・それは20歳の女の子に勧めてはいけないのでは・・・。

 

「それも一瞬考えたんですけど・・・そういうところで働いてるのって就職するときにバレちゃうとやばいじゃないですか」

 

「でも、180万円なんて体でも売らないと絶対ムリだって」

 

河田さん・・・まだ昼間ですけど・・・。そして仕事中ですけど・・・。

 

「だから最近、私の親も私が毎日働いているの見かねて『お金出してあげるから、もう働くのやめなさい』って言ってくるんですよ」

 

そりゃそうだ。自分の娘が学校を休学してこんなに毎日バイトしていたら親も心配するだろう。

 

河田さん「もう、堂前に払ってもらいなよ」

 

堂前・・・和田さんをストーカーしている気持ち悪い男だ。

ちょうど今日は通路を挟んで目の前に座っていた。

 

『堂前さん。これ、この前も言いましたよね?』

 

いつも爽やかな大谷さん(高嶋たちのOJT担当だった人)も堂前に対してはなんだか口調が厳しい。

 

ここでこんなにいじめられているのを見ると、喫茶店で女の子と会話することだけが楽しみだったこの男のことが若干可哀想に思えてきた。